
彼は小学生のころより吃音がありました。
中学生になっても症状は軽減することはありませんでした。
授業での発表や日直の号令など、発声を伴うさまざまな活動の度に”理想や願望”と”現実や諦め”の狭間で苦悩していました。
そんな彼が学校で開催される弁論大会で学年代表として全校生徒の前で発表することになりました。
彼の選んだテーマは『きつ音』でした。
原文のまま以下に紹介させていただきます。
「 きつ音 」 〇〇〇〇
みなさんはきつ音というものを知っていますか。きつ音とはうまく言葉が言えなかったり、言おうとしてもつまってしまったりするものです。
僕は、このきつ音という障害を全国のみんなに知ってもらいたいと思っています。
僕は小学高学年くらいからこのきつ音という障害があることを知り、体験してきました。例えば総合の発表や小学校の劇、身近なものでいうと、毎日の健康観察や友達との会話などさまざまなところでこの障害がかかわっています。
僕は、たくさんの場面でこの障害が出てきました。中でも一番苦労したのは中学生になってからでした。
中学生になったら生徒内での会話や自分の考えを意見として発表することが多くなりました。特に僕が大変で気にかけていたことがあります。それは日直です。日直では一日の朝礼や終礼をすらすらと進行する必要があります。中学一年の一学期にはたくさんの日直をする期間があり、たくさん苦労しました。日直をするたびに言葉を発している最中に言葉がつまったり、緊張のせいか思っていることを言葉として発言できなかったことが多々ありました。
日直も大変でしたが学校生活では自主的に手を挙げて発言をすることもあります。僕もこのきつ音の症状がなければ、自主的に沢山手を挙げて発表、発言したいことだってありました。でも、手を挙げ、発表しようとしても「どうせ上手に話せない。」や「上手に発表できない。」などと心の中でみんなには言わずに思っていました。
しかし、そんな中で母に一つ提案されたことがあります。それはオンラインできつ音の症状を和らげて、治していくようなものでした。
僕は中学一年からやり始めました。一番最初に今どのような感じで自分は言葉が発せないのか、どのような症状が主に出ているのかを録音して確かめるというようなことをしました。初回には、僕が前は知らなかったきつ音のことや、どのようにして症状が出るのか、どう意識したら言いやすいのかを教えてもらいました。先生もとてもやさしく分かりやすく教えていただいて、とてもやりやすかったです。練習の内容は、言葉を言いやすいやり方を保ったままの状態で文を読んだりすることを沢山しました。すると二学期になるにつれて、かなり言いやすくなりました。とてもきつ音のオンラインで練習をしてから成長してきたと自分でも感じられるようになってきました。そしてさらに、二学期の最初らへんに担任の先生に僕の症状のことを伝えたり、友達からもよく、「なんでそんなに言葉が言いにくそうなの?」とか聞かれたときに「ちょっとこんなふうに僕は言葉が言いにくいの。」と、だんだん友達に話したことにより、「大丈夫、みんなこんな風になるのかもと知っている。」などと気が楽になり、みんなの前で話しやすくなったと実感するようになってきました。
この様に、僕みたいなきつ音の症状をもっている人は日本に沢山います。僕はこの症状、この障害を少しでも多くの人に知ってもらって、きつ音の症状をもっている人達のモチベーション、気持ちからでも大分楽になってくると思っています。この事を、この症状を少しでも多くの人達に知ってもらえたらいいと思っています。
彼は現在でも完全に吃音が消失したわけではありません。全校生徒の前で発表するというのは、かなりの勇気が必要だったと思います。それでも伝えたかった彼の経験や思いが、より多くの方々に伝わればと思い、今回紹介させていただきました。
彼の勇気や行動が、吃音に悩む多くの方の力となりますように。